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山を楽しく安全に登るための55章
 by 森田秀巳

知恵と工夫がわが身を助ける
「困ったときの対処術」
ケガや病気の対処はこうやって
  1. 2000mを超えれば高山病になる
    • 高山病はヒマラヤやヨーロッパアルプスだけのものではありません。富士山や北岳、穂高岳といった3000m級の高山のみならず、2000mを超えれば高山病は発症するのです。
    • 高山病になると、吐き気や頭痛、めまいや咳などで、じっとしていてもつらい状況になってしまいます。高山の山小屋などで夜に発症した場合は、ひたすら静かに休んでいるしかありませんが、昼間だったら、すぐに高度を下げたほうがいいでしょう。
    • 高山病はひどくなると肺水腫や脳浮腫に進行してしまうことがありますが、そうならないうちに500mも高度を下げれば、症状はすぐに軽くなるはずです。

  2. 熱中症は迅速な対応が命を救う
    • 汗を大量にかいたのに水分の補給が足りないと、血液の濃縮や運動困難、熱疲労が始まり、体水分の10%を失うと熱中症に陥ります。
    • 熱中症にかかると、汗は出なくなり、体温は急上昇し、意識はもうろうとなります。昏睡状態に陥る前に適切な処置をしなければ死にいたってしまうこともあるのです。
    • メンバーが熱中症にかかったら、まずは風通しのよい日陰に運び、何としても体温を下げなければなりません。人間は42℃以上に体温が上がると生存できないのです。服をはだけて濡れタオルを体にかけ、うちわなどであおぎ、とにかく体温を下げます。意識があったり、戻ったときには、できるだけ冷たい水を少しずつ飲ませてみてください。
    • 熱中症を防ぐには、熱の逃げやすいウエアリング、そして十分に水分を摂ることが大切です。

  3. 関節痛や痙攣にはこうやって対処
    • 山で関節痛や痙攣が出るとつらいものです。だましだまし登るか、下山するしかありませんが、山小屋にしろ自宅にしろ、関節が痛むうちはまず冷やすことが大切です。痛みがとれたらこんどは温湿布や風呂で温めます。温めたほうが、軟骨や骨の再生は早いのです。
    • 行動中に膝の痛みが出たときはストックが役に立ちますが、ストックを持っていないときは仲間から1本だけ借り、痛む足とは反対側の手で持つといくらか痛みが軽減できます。
    • 足の筋肉の痙攣(つり)は、筋肉疲労のほかに、汗を大量にかいたことによるカリウムやナトリウム不足が原因の場合もあります。発汗が激しいときは、塩分の補給を怠らないとともに、バナナなどカリウムを含む食品を食べるといいでしょう。ちなみに、日本人の場合、1 の汗には3〜5 の塩分が含まれています。

  4. 安易な処置はケガを悪化させる
    • 自分のケガは別でも、他人のケガとなると、その処置は案外みんないい加減なようです。たいした出血でもないのにロープでぎゅうぎゅうに縛りあげて壊死寸前になったもの、骨折の添え木の当てかたが悪く、ケガ人をいっそう苦しめているもの、お腹の痛い原因もわからずにひたすら温めているもの(盲腸は温めないほうがいい)などなど、専門家が見たら失神してしまいそうな応急処置が今日もどこかで施されているかもしれません。
    • 一生懸命な気持ちは貴重ですが、骨折などの大ケガはやはり専門家の到着を待って処置してもらったほうがいいですし、緊急の止血はやらざるをえないにしても、基本は覚えておきたいものです。
    • 日赤や消防署、自治体、山岳団体などで実施する救急法講習を、山ヤたるもの、一度は受講しておくべきでしょう。

  5. 視力の衰えは脚筋力強化でカバーしよう
    • 歳をとると、目のオートフォーカス機能が低下します。近眼、老眼といった眼鏡で対処できるものとは違って、人により差はあるとしても、中年以降の人にはどうしても避けられない問題です。
    • オートフォーカス機能が衰えれば、目から入る情報の確認が遅れるわけですから、自分が動くスピードも低下してしまいます。これは登りよりも下りで大きく影響してきます。中高年登山者は下りのスピードが遅くなりますが、この原因は脚筋力の低下だけではないのです。
    • 別に速く歩く必要はないのですが、オートフォーカス機能が衰えると、ちょっとした突起にもつまずきやすくなってしまいます。つまづきやスリップに耐えるには脚筋力を鍛えることがいちばんです。少し鍛えれば、転ぶか転ばないかの差が出ます。あとはストックを有効に使えば万全のはずです。