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山を楽しく安全に登るための55章
 by 森田秀巳

知恵と工夫がわが身を助ける
「困ったときの対処術」
初めて知る自然の脅威
  1. 雷に遭遇しても運任せはいけない
    • 山では地震、オヤジ(みなさんはオヤジなんかちっとも怖くないでしょうけど)より雷のほうがはるかに怖いのです。
      俗に雷3日と言われるように、雷は続けて発生する傾向があります。
      天気予報の雷雨注意報はよく当たるので聞きのがさないようにしたいですし、山でラジオに空電が入るときは注意が必要です。
    • もし雷に遭遇したら、頂上や稜線、岩峰、木の下、湿地などからはすぐに離れ、伏せるようにうずくまります。
    • 首や頭部の金属類ははずしたほうがいいのですが、それより下部にある金属は、もし雷が当たったときに、体内を突き抜けるはずの電流が幸運にも体の表面だけを通過する沿面放電に変わるときの導体になることもあるので、必ずしもはずす必要はないという専門家の声もあります。

  2. 夏の雨だって簡単に死ねる
    • 突然襲ってくるのが雷の怖さなら、じわりじわりと痛めつける怖さがあるのが雨です。
      濡れたままの高山の稜線で風でも吹いていれば、それこそお迎えを待っているようなものです。
      下着が木綿ならこれはもう最悪で、生きる気力も容赦なく奪っていきます。
      1000m級の稜線だって、雨を防げる場所がなければ状況は変わりません。
    • 山登りで雨具を持たないのは論外ですが、高山や秋の山では、濡れによる体温低下から身を守るためにも、化学素材やウール素材の下着をつけておきましょう。
      もし大雨に襲われたときは、ブナなどの広葉樹林がより安全です。

  3. 風と寒さはダブルで襲ってくる
    • 風は風速毎秒1mで体感温度を1℃下げます。
      同時に標高も、1000m上がるごとに6℃下がります。
      つまり、2000mの稜線で毎秒10mの風に当たれば、標高0mで無風の状態にいるときに比べ、その体感温度は22℃も低いことになります。

      町が30℃でも山ではたったの8℃。

      これで体が濡れていれば体感温度はもっともっと下がります。
    • 風は血圧も上昇させます。
      寒い稜線で肌の露出した手や首筋を冷やすと、体がこわばり血圧が上がりやすくなるのです。
      高血圧気味の人が吹きさらしの稜線を歩くときは、手袋をしたり首にスカーフを巻くなどして保温するといいでしょう。
      同時に、ウインドブレーカーや雨具を着て、寒気から身を守りましょう。

  4. 晩秋のミゾレは吹雪よりこわい
    • 3000m前後の高山なら9月にはミゾレや降雪があります。
      2000m級の山岳なら10月です。
      最近は温暖化とやらのせいで何週間か遅くなる傾向も見られるようですが、そんなことはどうでもいいのです。
    • 本当に怖いのは、9月から10月の街は気分的にはまだ夏から秋への移行期なのに、山ではすでに冬であるということです。
    • ミゾレのタチの悪さは、雪と違って体やザックを濡らすことにあります。
      雪のような冷たさを持った雨。秋山での気象遭難の原因はたいていこのミゾレです。
    • ミゾレに降られたら、最短路からすぐに下山するか、山小屋に入るかしましょう。
      岩場にミゾレが張り付いたらもう動けません。
      山では、危険には立ち向かわずに、逃げたほうがいいのです。

  5. 危険な虫や動物もあちこちに潜んでいる
    • 30年前、北海道の日高で大学生3人がヒグマに食い殺されたことがありましたが、怖いのはクマだけではありません。山にはヘビもいるし、野犬もイノシシもいます。
    • 虫などの小さいところでは、憎きススメバチ、ヤマヒル、毛虫にアブに蚊。
      もっと小さいところでは、ブユ、ヌカカにダニ。
    • 書いているだけで気持ちが悪くなってきますが、こんなやつらに食いつかれたら山登りどころではなくなります。
      ただ対処法を書くにはあまりに狭いスペースなので、専門書で勉強してほしいと思います。
      いざというとき必ず役に立ちます。