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TBCとTBC                   2000年更新

何だよ! このタイトルは! と怒られそうですが、かなり重要なことです。
NTSCでは、CRTの走査線数は525本ですが、実は、262.5本が2回繰り返されています。これを2:1インターレースと言います。
映像信号は、ヘリカルスキャンでテープ上に斜めに記録されています。
実は、メーカーの考えるTBCと制作側の考えるTBCは、全く違う考え方をしなければなりません。

TBCの役目
  1. 時間軸変動
    • さて、わかりやすいように「アナログ」「コンポジット」VTRで考えます。
      ヘリカルスキャンでは、一本のトラック(信号の記録される線)に映像信号全体(262.5本)を記録できるので、可変速再生などメリットがたくさんありますが、たった1本のトラックに映像信号を記録するため、ちょっとしたヘッドの回転ムラなどにより、ジッターと呼ばれる時間軸誤差(Time base error)が発生します。
      Fig−1のテレビ画面に映る映像と書いた部分が262.5本の走査線のうちの1本です。
      これが図の下のほうに書いたような形式で1本のトラックに262.5本分記録されます。
      ここで、回転ムラなどがあると走査線の幅が変わったり、走査線と走査線の間隔が広くなったり狭くなったりしてしまいます。
      テレビ画面上では横方向に細かく揺れるようなジッターと呼ばれる映像の乱れや色のちらつきが生じます。
      そこで、走査線のデータをいったんメモリーに蓄えて、正しいタイミングで送り出すためにTBCが使われます。
  2. ドロップアウト
    • テープの磁性体がはがれたり、テープにごみがついていたりすると、信号の一部が記録されなくなってしまいます。
      これをドロップアウトといっています。
      ビデオを再生すると時々黒や白の線が横方向に一直線に見えるのがそれです。
      DOC(Drop Out Compensator)はこの欠落を前後の走査線からデータをとり出して置き換えて(2次元DOC)欠落を目立たなくしています。
      最近では前のフィールドのデータと前後の走査線のデータを使って補償する3次元DOCが良く使われます。
  3. 変速再生
    • スローや倍速など変速再生ではTBCを使って正しいNTSC信号を作り出します。
編集におけるTBCの役目
  1. 複数の機器の同期運転
    • 編集では複数のVTR、スイッチャー、測定機などさまざまな機器を使います。それらのタイミングがずれたりすると、うまく編集できません。
    • 急に話が変わりますが、友達と駅で待ち合わせをすれば(普通なら)ちゃんと会えます。これは、たいていの人が日本標準時に合った時計を持っているからです。
    • 同期信号発生器(またはスイッチャー)が日本標準時。TBCが友達の腕時計となります。これで2台の再生機が勝手に動くことなく同期して動くのでABロールができるわけです。
      すなわち、TBC=シンクロナイザー(synchronizer)となります。
    • ちなみにカメラは回転ヘッドやテープなど無いのでTBCは無く、代わりに発振器をもっていてこれを同期させる(ゲンロック:Generator Lock)ことで編集に組み込めます。
  2. ビデオレベルや色の調整
    • TBCはクロマ(chroma, color, 彩度)、ヒュー(hue, phase, tint, 色相:しきそうと読む)、レベル(明暗)、セットアップ(黒)レベルなどを調整できますが、ホワイトバランスのミスを救済できるほどの調整はできません。
      マルチカメラマルチVTR収録などでは同じ機種のカメラでも色・レベルなど若干異なる場合があり、カラーバーを波形・ベクターで表示させながら、それぞれのレベルなどを調整する時に使います。
ビデオ編集では同期運転(ABロールや他の機器との同期)と少々の画像レベルや色の調整のために必要。
メーカーとしては機械的誤差の修正に必要。というのが基本かもしれません。
実際あるメーカーでは編集に組み込めなくても高級民生機のパンフレットに3次元TBC搭載などと書いていたりします。
ずいぶん前の話ですが、某メーカーの家庭用EDベータにTBS(Time Base Stabilizer)という用語を使っていました。
これは「編集には使えないけど機械的なエラーは修正してますよ」というわかりやすい名前でした。

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